この青空に約束を―

この青空に約束を―
ネタバレ感想メモ



全体的になんとも言えない出来だった。つまらなくはないが……面白いと手放しでは言えない……。


なお、このエントリを書きながら感じた事だが、おまけのイベントモードで各イベントを手軽に振り返るのは親切設計と言える。概要まで付けちゃってあらすじの把握がしやすい。




沙衣里→奈緒子→海己→宮穂→静→凛奈→約束の日→茜

という順番で攻略した。


■沙衣里■
年上教師キャラなんていつもなら絶対後回しにするタイプなのに、沙衣里先生のへたれっぷりに惹かれて最初に読み進めた。


学校側の廃寮計画を阻止するために立ち上がる沙衣里と航というシナリオ。

手始めに学校側は寮生の成績不振をやり玉にあげる。沙衣ちゃんは教師として立派に寮生の成績をあげさせ、学校側の批判をかわす。順調順調かと思いきや、ラブホに落とした生徒手帳が原因で学校側が航を退寮処分にしようとする。航の相手が沙衣里だったと知られれば即廃寮決定だと思われたが、そこはなんとか隠し通す。最大のピンチを迎えたつぐみ寮メンバーであったが、全てはさえちゃんに委ねられた。航の処分を決定する職員会議の場で、沙衣里は孤軍奮闘して教師陣を説得した。当初は退寮処分が濃厚だったが、沙衣里の頑張りでなんとか停学処分に落ち着くことになった。
なお、問題発覚の夜に開かれた寮内会議において、航と沙衣里先生の関係が知られるところとなる。よくぞ今まで隠し通せた。
その後恐らく五〜六年後、教師となって航は栄生南島に帰ってきて沙衣里先生と仲良く暮らす事となる。おしまい。



やはり一番の見せ場は、職員会議で必死に他の教師達を説得するシーンだろう。あれほど他人に依存していたさえちゃんが独りでできるもん並みに頑張った。少しは憧れの奈緒子会長に近づいたのではないか。
寮内会議においては「正直に名乗り出たら怒らないから」と会長に言われ、馬鹿正直に名乗り出るさえちゃんだった。割とギャグシーンにまとまっているが、どうせなら更に話を拡げてつぐみ寮全体が痴話内戦状態になったりすれば面白いんじゃないかと思った。なんとか航とさえちゃんの仲を認めて貰う………ってこれどっかで見たシナリオだなぁ。

しかし結局リゾート計画の話はどうなったんだろう。確かに彼女ら二人で解決できる問題ではなさそうだし、最大の見せ場は職員会議のシーンにあったのでそっちに目を向けられがちであるが、だったら最初からその話題で押していかなくても良かったのでは、と思う。
あかべぇそふとつぅだったらこれを主題にして一つ作品を作ってきそうだが。





奈緒子■
実は中学生の頃に奈緒子を好いていた航。当時奈緒子は辻崎先輩を好いていて、航をその先輩の当て馬として利用した。それに気づいた航はショックで熱も冷める。奈緒子は航を利用した罪滅ぼしという意味で航と処女童貞セックス。そのまま付き合うのかと思いきや、これで二人の関係もおしまい、という手切れセックスだった。しかしその後色々重なって高校の寮で再び出会う事になる。
以上の過去が実は二人にはあった。これを知らないと全編通じて奈緒子が時々口にするセリフの意味が分からなくなる。
基本的なシナリオとしては、最初で最後のセックスの時に交わした五箇条の約束を乗り越えていくというシナリオ。ここでもやはり突然現れた過去の男辻崎先輩を当て馬にするという意趣返し。いや意趣返しじゃねぇか。まあ色々あって二人は復縁、ハッピー。
奈緒子はわざわざ航でも入れるような大学へ進学。一年後航も同じ大学へ、そして始まる同棲。おしまい。


航の過去を知るためにも、会長は一番目にプレイするべき。



「明青大だって!紛うことなき二流どころだよねっ」
明大か青学か、どちらにせよ見事なMARCH二流大。しかし航はあの成績から一年半でMARCH合格まで頑張ったのね……。やれば出来る子。でも無名の?辻崎先輩は八橋大学(一橋?)に進学して天研なんぞに所属してるわけだから……そこまで会長の頭も完璧超人というわけでは無さそうだ。
でもさー、一橋って文系しか学部無いと思うんだが、会長は文系なのか。航は理系なわけで、同じ大学だとしてもキャンパスは離れてそうだな……。。重箱の隅もいいところだ。



■海己■
逆にこいつは最後にプレイすべき。その方が百年の恋も盛り上がる。

海己ちゃんはずっと前から航の事が好きだった。しかし二人が付き合うと親族問題が生じるので一線を越える事を拒否していた。
「航とわたしが『ふたり』になると、また『みんな』が、壊れちゃうから」
「『みんな』が許してくれるなら…『みんな』が祝福してくれるなら…」
中略
「わたしは、ずっと前から、航の、ものになってた…」

とかなんとか嵐の夜に本音トークをし、航くんはよし付き合おう、と思ったようだ。きっかけは抱きつかれて性欲がムラムラしてきたからみたいなんだけど。

後半は『みんな』でいるためのプロセス。海己が演説して署名を頑張った結果あっけなく寮の存続も決まりました。そして時は経ち最後は島で結婚しておしまい。


全体的にあまり引き込まれない。特に演説シーンなんかは恥ずかしくて見てられない。若い人向けなのか。

ちなみに署名演説後に交わされた会話
【教頭】これは…ど、どう…
【学園長】なぁ…博さぁ
【教頭】博はやめろって…伸ちゃん
悪役が見せた唯一人間らしい部分。これは良かった。というより、この二人組を悪役として描くのはどうなんだろう。見方を変えれば彼らは産業無き島の救世主とも言えるはずだ。寮生という視点から見た結果が悪役なのであって、決して彼ら自身を卑劣な人間として描く必要性は感じられなかった。寮に住み続けたいと思う気持ちは島にとって良いことなのか、自分たちのワガママなのか、という公か私の選択を迫るような展開をもう少し強調しても良かったように感じる。海己の演説ではそうした部分を指摘していたが、もう少し膨らませられたと思う。逆に、ここまで二人組を悪役として描いてしまえば、そうした葛藤が生まれないのも当然か。

また、「出水川重工の撤退」と「廃寮」と「リゾート化計画」が混同しやすい点も気になった。

・重工の撤退→寮生の減少→規則により廃寮
・重工の撤退→産業空洞化→リゾート計画でホテル建設→用地取得のため廃寮
スタートとゴールは一緒だが、プロセスが違う。




しかし何はともあれなんといっても海己は健気でエロい。

「そんな、結論の出てることを、今更蒸し返したって、しょうがないじゃない」
「わたしの夢も、そしてわたしの現実も、もう、絶対に、変わらないんだから」
「わたしは、航が、誰を好きになろうと、認める。頑張って祝福する。歯を食いしばって、力になる」
「好きな人と一緒に、みんなと一緒に、わたしの前で、航が、ずっと、笑っていてくれるなら」
「いくら心がなんて言おうと、それが一番、わたしにとって、現実的な幸せだから」

と、聞いてしまった以上、他キャラを攻略してる最中に見せる海己の表情が可哀想で仕方がない。ついでに、こんなに健気な海己をほっといて航は中学時代に会長と事を済ましていたなんて、なんというリア充

「俺が、『安心できる存在』である限り、海己は、俺の側にいることを、厭わない。」
「それは、5年くらい前からの、兆候。…そのからくりに気づいたときは、結構、落ち込んだりもしたっけか。」
「…航が諦めなければ、絶対に通じるよ」
中略
「通じなかった奴が、何か言ってるぞ、おい。それって、裏を返せば、どういう意味なんだ…?」(奈緒子ルートより)
5年前の時点でこの状態からあと一歩海己と膝つき合わせて語っていれば童貞を海己に捧げる事も出来ただろうに……。
まあ、海己とのHシーンが激しかったので許す。


海己の想いは各キャラルートで垣間見ることが出来る。これがメインヒロインの干渉力。他キャラルートの時にもっと出しゃばれば人間くさくて良かったようにも思われるが、そういう事をしないのが海己の性格を表しているんだよな。。


■宮■
ここらへんからだんだん飽きてきた。

宮のお祖父ちゃんを対象にした自由研究シナリオ。
お祖父ちゃんがお祖母ちゃんに告白したとされる洞窟で宮も先輩に告白。即セックスのおまけつき。しかし六条家的にどこの馬の骨ともわからん航との交際は認められません!!星野一族ってそんな馬の骨でも無いだろと思ってはいけないらしい。
それでもめげずに大学生活中も六条家の近くに下宿し、諦めずに宮のもとへ通い続ける。いつのまにか家人とも馴染む。

五年後、島で再会。なんと航君は出水川重工内定かつ教員免許も取得というエリートになっていた!!出水川ってきっと三菱重工あたりなんだろうけど、明大か青学学部卒の理系で三菱重工とか驚きだ。フィクションだけど。

未読文に対してスキップを使っている自分がいた。

■静■
お風呂場で洗い合ってたら発情してしまった航と静。

その後静の両親が更正してやっぱ静を引き取りたいと。しかし静は寮を離れたくないと言う。
でも現実的にそのうち寮は無くなっちゃうんだから、今のうちに外の世界にも慣れておかないとね、以上。

数年後帰ってきた静の一枚絵はなんともいえない雰囲気に。あれはいいのか?ダメなのか?わからない。


未読文に対してスキップを使っている自分がいた。

■凛奈■
凛奈は逢わせ石のペアが航だったらいいなと思っていた。凛奈の事が好きになった航はその逢わせ石の片割れを探した。見つかった。ただ実は凛奈とペアの逢わせ石を持っているのは隆史さんだった。しかし航はそれとは関係なしにようやく好きと言った。めでたしめでたし。
その後うちの高校に来ないかとどこぞの陸上監督にスカウトされたが、まだ一年残ってるのにみんなと別れるのは嫌!みたいな静やら海己みたいな流れに。そんなイザコザも文化祭を通じてなんとかクリア。演目上、海己とキス。

卒寮後は陸上の強い高校に行って大学でも陸上頑張ってすげぇ選手になった。航とも仲良くやっているようだ。

未読文に対してスキップを使っている自分がいた。

■「約束の日」■
誰とも仲良くならず星野ハーレム寮は閉鎖、みんな散り散りになっちゃうけど、みんなとの思い出は忘れない!!だって、寮がここまで存続できたのはわたしたちの努力の賜なのだから。

内容自体は薄っぺらくとも、ここまで読み進めていれば感動できるシーン。特定のルートには入っていないが、みんな航の事が好きだし、これがトゥルーエンドという事だろう。


■茜■
星野ハーレム寮は閉鎖され、一家離散後、気づいたら寮は壊されていた。航はショックでダメ人間になっていた。島居残り組の茜は海己の代わりとなるべく甲斐甲斐しく付きまとう。一年ぶりの祭りにも元気のない航、あぁ去年までいたみんなはもういない、それどころか寮も無くなってしまった→気づいたら茜の胸で男泣き→セックス笑。
完全復活した航はおじいちゃんを町長選に担ぎ出してリゾート開発計画の白紙撤回をもくろむ……。航政界進出END。

一週間に一回の頻度で手紙を送ってくれる海己に返事を出して早急に海己ルートに進路変更すれば良いのにと思った。




多分世間一般が評価するよりは楽しめなかった。なんとなく薄っぺらいのよ。男女が同じ屋根で共同生活してる!といったトンデモ設定はむしろ大歓迎なので、もうちょっとシナリオに深みを持たせて欲しかった。とらドラを読んだ直後だからか、ハーレム状態から一人を選ぶ事の難しさをもっと掘り下げていけば良かったのではないかと上から目線ながら感じた。
そもそも個別ルートに入ると寮の存続問題がどこかへ消えてしまうのも仕方がないと言えば仕方がないが、やはり据わりが悪い。せっかくの設定なんだからもう少し生かせられたのでは。


久しぶりの王道型エロゲーでした。王道エロゲーにしてはエロ分が多くてそこはきちっと評価すべき点だと思う。
分岐型シナリオはメインとサブの扱いが難しいよね。